金沢市「養サポ」事業 立案担当者のつぶやき⑦【誰が支援(助成)を受けられるか(5) 離婚前の父母から全ての父母へ】

2024年05月14日

前回、前々回と回りくどい話をしたが、本記事で、ようやく、要サポの支援が受けられる方の範囲はどこまでなのか? という結論部分に繋がっていくことになる。


「離婚前の親を支援するということはどのようなことを意味するか?」

当たり前の話だが、離婚を考える父母の場合、離婚後に子を父母どちらが育てるのかという点はまだ合意できていないことが少なくない(それが最も先鋭化すると家庭裁判所を舞台とした親権争いに発展する)。グラデーションはあるが、養育費を支払う親(義務者)、養育費を受け取る親(権利者)は未確定の状態にある。

自治体がこうした親を経済的に支援することによって、養育費の取り決めを促す場合、果たして権利者・義務者どちらを支援するのが適当か? あるいは権利者・義務者両方か?

些かやらせ質問が過ぎたが、権利者・義務者という色分けができない段階なのであるから、当然父母(潜在的権利者、潜在的義務者)双方を支援することになる。

この点については、確かに、離婚協議や離婚調停などを経て、最終的には親権者(同居親)が定まることになるので、それが決まった段階で、親権者(同居親、権利者)に対してのみ助成するという制度設計も物理的には可能である。

しかし、離婚という結果を受けて初めて、親権者にのみ助成するのだとすると、「離婚に第三者を関与させることを促す」すなわち「自治体が助成を行うことで父母の背中を押して、第三者(専門家や専門機関)を利用してもらう」という目的を達成することはできない。

控え目に言ったとしても、「親権が取れたら助成しますので第三者を利用してくださいね」では、父母の意識(意欲)や行動はほとんど変えられないだろうし、そればかりか、親権争いをしている一方当事者に自治体が加担している(親権を取得すること自体を推奨しそれを後押ししている)といった批判にも繋がりかねない。

よって、結果いかんにかかわらず、離婚に向けたやりとりを開始する段階でしっかりと助成すること(助成を約束すること)が重要なのである。


さらに、離婚前の父母を助成するということは、もう1つ重要な意味を持つことになる。

前回述べたように、離婚事件では、親権や養育費以外(親子交流、財産分与、慰謝料等)も話し合いや取り決めのテーマになってくる。金沢市の養サポを含め自治体による養育費事業は、形式論としては、このうち養育費に関する部分に限って助成するわけであるが、しかし、実態としては、父母は、同じヒト(弁護士等)・同じ場(家庭裁判所等)を同時に利用して、全てのテーマについて話し合い等をする(してしまう)ことになるから、結局、養育費以外の話し合いも促進することになる(促進することにならざるを得ない)。

以上の2つの点【①離婚前の父母双方を助成すること、②これにより養育費以外の話し合いも促進する結果になること】を踏まえると、離婚後の養育費単独事件の義務者(別居親)も助成しない理由がないのである。すなわち、離婚事件において、養育費の潜在的義務者も助成するし、結果として、父母双方に対し養育費以外の話し合いの便宜も図ることになるにもかかわらず、(離婚後の)養育費単独事件における顕在的義務者を助成しないとするならば、子の養育費確保(養育費の話し合いと取決めの促進)という目的に照らして、あまりにもバランスを欠く制度となってしまう。

かくして、離婚前か離婚後か、養育費の権利者か義務者か、を問わず助成を行うことの必要性と妥当性が導かれることとなる(※)。

以上のとおり、養サポで助成を受けられる親は幅広い。

したがって、「私は親だけど、制度の説明に書かれている文言からすると、私は助成を受けられないのでは?」と思った場合も、諦めずに、まずは金沢市子育て支援課までお問い合わせいただきたい。

※ 技術的な話としては、金沢市養サポが定める「ひとり親」及び「子を扶養する(扶養しようとしている)親」という要件はかなり緩やかに解釈されるか、別途定められているバスケット条項を利用して、広く捉えることになる。ちなみに、「つぶやき④」で書いたことの繰り返しになるが、国の実施要綱では、婚姻中の父母、ひとり親、別居親いずれに対しても自治体が助成することを認めている(=これらの親に自治体が助成した場合、国は自治体に補助金を交付することとしている)。