金沢市「養サポ」事業 立案担当者のつぶやき⑩【具体的な支援(助成)(3) ADR利用料】
「ADRとは?」
ADR(裁判外紛争解決手続)とは、中立公正な第三者(調停人)の支援のもとで、相手と共通の課題について話し合い、合意を目指す民間の手続である。基本的に、どのような課題でも取り上げることができるので、離婚や養育費についても話し合うことができる。
日本には沢山のADR機関が存在しているが、このうち、離婚や養育費案件を取り扱っているのは、189機関である(2024年6月4日現在。法務省「かいけつサポート」での検索結果による。なお、法務大臣の認証のない弁護士会ADRを除いた数字である)。
ADRは、第三者(調停人)に適切に支援してもらって話し合いを進めるという点で、家事調停と類似している。
「ADRのメリット① 〜柔軟性と利便性〜」
ADRの一番のメリットは、民間組織なので、家事調停(裁判所)と違って、話合いの開始〜和解に至るまでの手続の柔軟性や利便性が非常に高いという点である。
例えば、多くのADR機関では、当事者の希望があれば、平日夜間や土曜休日に期日(話し合いを行う場)を開催していたり、IT(といっても、メールやwebフォーム、Zoom等のWeb会議システム、スマホアプリ等であり、決して難易度の高いものではない)を利用して、自宅にいながら話合いや書類の提出(送信)を可能としたりしている。すなわち、不必要な対面でのやりとり、電話、紙、郵便を極力排除している。
さらに、一部のADR機関は公証役場(公証人)と連携しており、利用者にとって大きなメリットとなっている。このようなADR機関で話し合いがまとまった場合には、その内容(養育費等の合意)を公証役場で債務名義にするところまで対応してもらえることになる。勿論、戸籍謄本や印鑑証明書といった必要最小限の紙ベースの資料を入手しこれをADR機関に郵送するという一部の事務作業は残るが、あとは全てオンラインベースで、【調停人を交えた相手との話し合い】から【債務名義の取得】に至るまで、ADR機関のみとやり取りすればよいということになる。
「ADRのメリット② 〜弁護士費用と比べた場合の費用の安さと明瞭性〜」
ADR機関の利用料金体系は機関によって様々であるが、離婚事件や養育費事件の場合の利用料は、概ね数万円〜10万円前後となっており、代理人弁護士に事件を依頼するよりはかなり安価となっている。
また、料金体系が明確なADR機関が多く、事前にいくらくらい料金がかかるのかということがわかるので安心である。
金沢市養サポでは、養育費に関するADRの利用料を上限10万円まで助成することとしているが、以上のような民間ADR機関の利用料金の仕組みと実情を踏まえている。養サポを使えば、多くの場合、ほぼ自己負担なしで父母はADRを利用することができるだろう(※)。
「ADRでの解決に適する父母」=争わずにきちんと協議したい父母
以上のように、ADRは、代理人弁護士や家庭裁判所を利用するほどではない(無駄に事を荒立てたくない、必要以上に手間・時間・費用をかけたくない)が、だからといって、自分と相手だけで離婚や養育費のことを決めるのは不安やリスクが残るので、その道に詳しい専門家の支援を求めたいという父母のニーズに合致するといえる。
ADRが、第三者の関与が全くない離婚(純粋な協議離婚)と、代理人弁護士や家庭裁判所を利用した離婚との間を埋める第三の選択肢であるといわれる所以である。
「養サポADR助成のその他の特長」
債務名義取得費用の助成と違い、「結果」が得られることと助成を紐づけていない。すなわち、ADRを利用したが、残念ながら和解成立(離婚や養育費の取決め)に至らなかった場合でも、それまでに要した費用を助成することとしている。
また、債務名義取得費用の助成と合わせて利用することができるので、無事和解が成立し、これを(ADR機関を利用して)公正証書にした場合には、ADR機関に対して支払う費用(ADR利用料)、公証役場に対して支払う費用(公証人手数料等)をそれぞれ別枠で助成することが可能である。
このように、養サポのADR利用料の助成は、非常に使い勝手が良い(という自負がある)。
ADRについてもっと詳しく知りたいと思ったら、遠慮なく子育て支援課までご相談ください。相談者のケースがADRでの解決に向いているかどうかや、具体的にどのADR機関を利用すれば良いのかといったことなどについて、「ADRファン」である三澤が詳しくご案内いたします。
※ やや細かい話になるが、養サポでは、権利者・義務者(父・母)双方が助成を受けることが可能なので、両者が養サポの助成を申請した場合には、最大10万円ずつ助成を受けることができる。