金沢市「養サポ」事業 立案担当者のつぶやき⑥【誰が支援(助成)を受けられるか(4) 離婚前の父母への支援の必要性②】

2024年05月12日

「(離婚後の)子の養育費確保のために離婚前から親を支援する」

・そのこと自体は正しいことだとしても、なぜ離婚そのものに踏み込んでいくのか?
・「養育費の確保」というテーマに照準を合わせるのであれば、離婚後の親の養育費確保支援だけを行えば足りるのではないか?
・(実際、養育費は離婚後も取り決めたり変更できたりするようなので、)自治体による関与の仕方としてはむしろそれくらい控えめの方が望ましいのではないか?

などといった反論が聞こえてきそうである。

こうした反論に対しては、概ね以下3点が指摘できる。

(1)一度決められてしまった養育費は変更しづらい

離婚時に父母間で低い養育費が決められてしまったとしても、後から是正・変更すれば良いのではないか? という疑問があるかもしれない。

確かに、家庭裁判所の手続(養育費増額調停)等を用いて、養育費の金額を変更することは制度上可能である。

しかし、だいの大人同士が一旦決めたものを変更することについて、裁判所は積極的ではない。父母双方の力関係がどうであり、どのようにして養育費が取り決められたのかということ(過去、プロセス)を精査するよりも、合意後の新たな事情(事情の変更。例えば、親の収入の変化など)に着目しようとし、それが見つけられれば養育費の増減を認めるという考え方が強い傾向にある。

したがって、父母間で(力のある方の親によって一方的に)低い養育費が決められてしまってからでは遅いのである。

また、首尾よく裁判所で養育費の増額が認められることになったとしても、そのためにひとり親が費やした時間、労力、費用を見過ごすことはできないだろう。

(2)養育費を請求する機会(養育費の一部)を失ってしまう可能性がある

それでは、離婚時に養育費を取り決めなかった場合はどうだろうか?

確かに、この場合は、まっさらな状態から養育費を決めていくことになるので、上記(1)のような困難さはない。第三者の関与があれば、適切妥当な水準の養育費が導かれることになりそうである。

しかし、この場合も話はそう単純ではない。

養育費は、請求できる側(同居親)が相手方に対して文書等により明確な方法で請求してはじめて、その時点以降の分を受け取ることができるとされている。逆に言うと、請求した時点よりも前の分は、後から遡って養育費を請求することは難しい

例えば、離婚時に取り決めをせず、はっきりとした形で請求もせず、1年経ってから初めて養育費を請求したとしよう。この場合、最初の1年分の養育費は受け取ることが難しくなってしまう。

したがって、やはり、なるべく早めに(離婚する前に)第三者が介入することが(少なくとも、このような養育費の仕組みについて第三者が情報提供することが)必要になってくる。

(3)離婚と同時に取り決めることで(有利で)柔軟な解決が1回的にできる

父母が離婚に向けた話合いをする際は、親権者と養育費のことだけでなく、親子(面会)交流、財産分与、慰謝料、年金分割等もテーマとなるのが通例である。

確かに、これら全てを離婚時に決めようとすると、変数が多くなって話合いが複雑になる、時間や労力がかかるといった面はある。

しかし、裏を返せば、その分、調整要素も複数あるということになる。一歩引いた目線で、自分と自分が置かれている状況を眺めることができれば(言うは易し行うは難しであるが…)、全体としては許容できそうな解決点を見出しやすくなる。

また、解決まで少し時間はかかるかもしれないが、問題を先送りせずに、全て一遍に解決することで、すっきりとした気持ちで新しい人生を歩み出すことができるというメリットも大きいだろう。

ちなみに、相手が早く離婚したいと考える度合いが強い場合には、相手から(養育費を含め)有利な条件を引き出せる可能性が高まるから、そのような場合も、離婚時に養育費を取り決めておいた方が良いといえる。

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(前記事を含めて)やや長くなったが、以上が、離婚前の段階から父母の養育費確保を支援すべき理由(必要性)である。

こうした支援があって初めて、子どもが十分な養育費を、早く、安定的に受け取ることができる可能性が飛躍的に高まると考えられるのである。